中国の上場企業450社超が、今年初めて義務としてのサステナビリティ報告書を提出した。次に来るのはそのサプライヤーだ。
日本の報告担当チームは、この二年をCSRDとSSBJに費やしてきた。同じ時期に三つ目の制度が動き出しているが、東京でその質問を受けた人はまだほとんどいない。
上海・深圳・北京の三取引所は2024年2月にサステナビリティ報告に関するガイドラインを公表し、2024年5月1日に施行した。義務としての最初の報告書は2025暦年を対象とし、期限は2026年4月30日だった(Clifford Chance)。対象は450社超、上場時価総額のおよそ半分にあたる(Business & Human Rights Resource Centre)。
対象になるのは誰か
義務がかかるのは二つの区分だ。SSE180指数、科創板50指数、深証100指数、創業板指数の構成銘柄のうち報告対象期間を通じて組み入れられていたもの。そして中国国内と海外に重複上場している企業である。それ以外の上場企業は推奨にとどまり、義務ではない(Clifford Chance)。
対象は狭い。だから中国に製造子会社を持つ日本の親会社は、通常この範囲には入らない。ここで「うちには関係ない」と読むのが誤りになる。対象450社の開示義務は、それぞれのバリューチェーンを通って流れていくからだ。そこに日本企業は数多く入っている。
取引所が求める開示項目は、気候変動、生態系・生物多様性の保護、循環経済、エネルギー利用、サプライチェーンの安全、農村振興、腐敗防止・贈賄防止などにわたる(Business & Human Rights Resource Centre)。サプライチェーンの安全と循環経済は、いずれも仕入先に聞かなければ書けない項目だ。
取引所の上にある国家レベルの枠組み
2024年12月、財政部は他の八つの部門と共同で「企業サステナビリティ開示基準——基本基準」を試行版として公表し、2025年9月には適用ガイドが続いた(China Briefing)。最初の個別基準である「企業サステナビリティ開示基準第1号——気候」は2025年12月25日に公表され、現在は任意の試行段階にある。重点業種と上場企業から段階的に広げる設計だ(China Briefing)。
計画を立てるうえで重要なのは、公表されている順序のほうだ。基本基準、気候基準、適用ガイドは2027年までに順次公表され、全国統一のサステナビリティ開示基準体系は2030年までに基本的に確立される。対象は大手上場企業からより小さな企業へと広がり、任意から義務へ移行していく(Baker Tilly)。
設計思想としてはダブルマテリアリティが採られ、ESRSとIFRSサステナビリティ基準の双方を参照し、相互運用性を目標に掲げていると報じられている(Baker Tilly)。これが個別基準まで貫かれるなら、中国向けの報告書では、ISSBだけを見てきた企業が答えたことのないインパクト側の問いが出てくる。ESRS対応を済ませた企業には既視感のある問いだ。
ESRSにもISSBにも対応する項目がないもの
農村振興は、気候変動や腐敗防止と並んで取引所の開示項目に入っている。ESRSにもIFRS S1にも、これに対応する項目はない。欧州やISSBの意味でのサステナビリティ論点ではなく、中国の国家政策目標だからだ。ガイドラインは、それを同じ報告書のなかで扱わせている。
Clifford Chanceはこのガイドラインを、国際基準と整合させつつ中国固有の事情も織り込んだものだと説明している。農村振興はその意味がいちばんはっきり出る例だ。外資グループにとっての実務上の帰結は、中国向けの報告書が既存の報告書の翻訳にはならないということである。求められる項目の一部は、自社のデータモデルに置き場がなく、担当者もおらず、前年の数値もない。中国の要求をESRSのデータポイントに対応づけて、残りを些末なものとみなす進め方をすると、この欠落は見えないまま残る。
重なるのは環境と排出量のデータまでだと考えておいたほうが安全だ。
日本企業が実際にこれに触れる場面
到来する順に三つある。
一つ目は仕入先としてだ。サプライチェーンの安全とScope 3を報告する中国の指数構成銘柄は、自社に納入している企業から一次データを取る必要がある。中国の上場メーカーに部品・素材・設備を納めている日本企業には、その依頼が中国の報告スケジュールで、中国語で届く。
二つ目は合弁を通じてだ。中国の上場企業に出資している場合、その企業の開示は、日本の親会社がSSBJの報告範囲と突き合わせる対象になる。SSBJの範囲は財務諸表から引かれるのであって、サステナビリティ報告書から引かれるのではない。
三つ目は、後から来る直接の義務だ。示されている方向は2030年までに大手上場企業を超えて対象を広げることなので、中国に相応の事業基盤を持つ日本企業は、直接の義務が今後10年以内に来る前提で考えたほうがいい。
内容より、日程のほうが厄介だ
2025暦年を対象とする中国の報告書は2026年4月30日が期限だった。3月決算の日本企業は、SSBJの開示を載せた有価証券報告書を事業年度末から3か月以内に提出する。CSRD対応企業は監査と公表の独自のサイクルで動く。
それぞれの制度が独自の期限と報告主体の定義を持ち、その裏にある排出量、エネルギー、仕入先のデータは同じものだ。報告書を三本書いても、この問題は解けない。解けるのは、一つのデータセットを持ち、各数値の出どころを一度だけ記録しておいて、三つの異なる範囲と三つの異なる期日に対して同じ数字を出せる状態にしたときだ。
同じ供給者データを四つの様式で求めるEUの四つの提出物について、一つの仕入先データセットと四つのEU提出物で書いたのと同じ結論になる。中国は別の大陸から五つ目の問い手として加わるが、答えは変わらない。
これからの二四半期でやること
中国の顧客のなかに指数構成銘柄があるかを確認する。SSE180、科創板50、深証100、創業板の構成銘柄は公開されている。主要取引先を突き合わせるのは半日の作業だ。そこが最初に質問票を送ってくる相手になる。
中国子会社が現地ですでに報告していないかを確認する。任意で、あるいは地方政府の要請で報告している例は多い。そこで公表された数値が、東京で親会社が報告している数値と突き合わされたことは、ほとんどない。同じ拠点について二つの数字が二つの言語で出ている状態は、いずれ保証を担当する側が見つける。
中国側の回答を誰が持つのかを決める。CSRDとSSBJには担当者がいる。中国側にはいないことが多く、依頼は営業に届き、営業は取引を守るために回答する。
そのうえで、回答を文書ではなくデータとして扱う。表計算に書いてメールで返した数値は、出どころのない数値だ。同じ数値でも、どこから来たかを記録する仕組みから取り出したものなら、次の四半期にも、次の言語でも、次のフレームワークでも使える。
自社のギャップを手早く把握したい場合は、無料のSSBJレディネスチェックが数分で終わり、点数ではなく具体的な項目のリストを返す。欧州で報告する企業向けにはCSRD版がある。Socious Reportはその先——一つのデータセットからCSRD・SSBJ・ISSBの報告書を作り、その結果に独立したSocious Verifyの認証を付ける——を担う。