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CSRD立法タイムライン——指令はどう作られ、止められ、絞り込まれたか

Socious Team
CSRD立法タイムライン——指令はどう作られ、止められ、絞り込まれたか

CSRDのタイムラインを扱うページの多くは、ひとつの問いにしか答えていません。どの企業が、いつから報告するのか。それは有用な表ですし、当社もCSRDタイムラインと2026年の適用期限のページで維持しています。

このページが答えるのは、別の問いです。自社がいつ報告するかではなく、法令そのものに何が起きたのか。いつ採択され、いつ発効し、いつ基準が出て、いつ止まり、いつ絞り込まれたのか。4年間で4本のEU立法が積み重なり、そのたびに最初の問いへの答えが変わってきました。

2023年に受けたCSRDの助言と、いま受けている助言が噛み合わない——その理由は、以下の経緯にあります。

2022年11月——採択

欧州議会は2022年11月10日、賛成525・反対60で企業サステナビリティ報告指令(CSRD)を採択しました。EU理事会は同年11月28日に承認。指令は2023年1月5日に発効しています。

CSRDが構造として行ったのは、非財務情報開示指令(NFRD)の置き換えでした。変えた点は3つあります。対象範囲を、NFRD下のおよそ11,700社から大幅に広げたこと。保証(アシュアランス)を任意から義務に変えたこと。そして「重要と考える事項を、任意の形式で開示する」方式を、単一の欧州共通基準に置き換えたことです。

実務上いちばん効いたのは3つめですが、そこには穴がありました。採択の時点で、その基準はまだ存在していなかったのです。

2023年7月——ESRSの登場

欧州委員会は2023年7月31日、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を委任法令として採択しました。

CSRDが「政策の方向性」から「データの問題」に変わったのが、この時点です。最初のESRSセットは、環境・社会・ガバナンスにまたがる1,000を超えるデータポイントを持ち込みました。その多くは、監査に耐える精度での出力を一度も求められたことのない社内システムから取り出す必要があります。グローバル企業が並行して対応する他の枠組みとの関係は、ESRS・ISSB・GRIの比較で整理しています。

義務が先に立法され、その仕様は8か月後に出てきました。基準を待たずに指令の条文だけを頼りに構築を始めた企業は、その8か月を推測で進めたことになります。EUは2026年、EU域外の親会社向け基準でも同じ順序を繰り返しています(後述)。

2024年7月——ほとんど守られなかった国内法化期限

指令はそのままでは適用されません。各加盟国が国内法に落とし込む必要があり、CSRDはその期限を2024年7月6日に設定していました。

これは広範囲に守られませんでした。欧州委員会は違反手続きを開始し、期限までに完全な国内法化を行わなかった17の加盟国に正式通知を送っています。

複数のEU諸国で事業を持つグループにとって、この年はかなり厄介でした。EUレベルでは義務が動いているのに、拠点を置く国の相当数で国内実施規則が未整備か部分的なまま。提出形式、保証業務の担い手の要件、罰則といった加盟国裁量の部分が定まらない状態が続きました。国内法化の際に指令より厳しい上乗せが行われる例もあり、複数国で報告する企業にとっては現在も論点です。

2025年4月——「ストップ・ザ・クロック」

2025年4月16日、EUは指令(EU)2025/794をEU官報に公表し、翌17日に発効しました。加盟国の国内法化期限は2025年12月31日です。

内容は限定的でしたが、影響は大きいものでした。CSRD報告の第二波・第三波を2年延期するというものです。2025年1月1日以降開始事業年度について2026年に報告予定だった企業、および2026年1月1日以降開始事業年度について2027年に報告予定だった企業が、いずれも2年後ろにずれました。

第一波——すでにNFRD対象だった大規模な社会的関心事業体で、2024年度について報告する企業——は延期されず、予定どおり報告しています。

第二波・第三波のチームは、その時点で1年半にわたって特定の期限に向けて準備を進めていました。必要なデータそのものは何も変わっていません。変わったのは日付だけです。

2026年3月——オムニバスによる縮小

実質的な書き換えは次に来ました。第一次オムニバス指令である指令(EU)2026/470が2026年2月26日にEU官報に公表され、2026年3月18日に発効しています。規定の詳細はEUオムニバスとCSRD 2026年の分析で扱いました。

タイムラインの観点で決定的なのは、適用基準の引き上げです。CSRDの対象となるには、従業員1,000人超かつ売上高4億5,000万ユーロ超の両方を満たす必要があります。2022年の当初設計では基準はこれより大幅に低く、対象はおよそ49,000社規模でした。そのうちおよそ8割が対象外になります。残る企業数は8,000〜10,000社程度と見られていますが、この数字は公式集計ではなく推計です。

適用は2027年度に移り、最初の報告は2028年になります。加盟国はCSRD関連規定を2027年3月19日までに国内法化する必要があります。

つまり、2022年指令で対象となり、2025年指令で延期され、2026年指令で対象外となった企業は、自社は何ひとつ変えていないのに、同じ問いに対する法的な答えを40か月で3回受け取ったことになります。

未完の部分——EU域外の親会社

この経緯には、まだ開いたままの部分があります。そして、日本をはじめとするEU域外に本社を置くグループが注視すべきなのは、まさにそこです。

CSRDの射程はEUの外にも及びます。域外グループは欧州における拠点を通じて対象になり得ます。オムニバス後の判定基準は、主要法律事務所のトラッカーが読む限りでは、純売上高2億ユーロ超のEU子会社または支店があり、かつ最終親会社のEU域内純売上高が2期連続で4億5,000万ユーロを超えること、という組み立てです。最終親会社レベルでの連結報告は、2028年1月1日以降開始事業年度から適用される見込みとされています。

一方、EU域外の親会社が実際に準拠する基準そのものは、欧州委員会が2026年6月30日までに採択することとされていました。枠組み全体のなかで最も固まっていない領域であり、今後さらに動く可能性が最も高い部分でもあります。上記を含め、いま目にする域外向けの具体的な数値基準は「現時点での理解」として扱い、委任法令が確定した段階で必ず確認してください。

この経緯が示していること

通して読むと、見えてくるのは「欧州がサステナビリティ報告そのものを見直した」という話ではありません。延期も縮小も、中身には手をつけていないからです。ESRSが求める内容は変わらず、保証は依然として必要で、ダブルマテリアリティも維持されています。動いたのは、誰が・いつまでに対応するのか、という部分です。

提出物——期限、様式、テンプレート——に向けて作り込んだチームは、上記4つの段階のたびに作業を失いました。その手前にあるデータ基盤に向けて作ったチームは、ほとんど失っていません。指令が改正されても、企業が報告する事業上の事実そのものは変わらないからです。排出量、購入電力、従業員構成、サプライヤーへの支払い——受け取り手がCSRDであれ、日本のSSBJであれ、アジア太平洋で採用が進むISSB基準であれ、同じ数字です。

日本企業にとって、これは仮定の話ではありません。欧州拠点を持つ企業は、この4年間で自社のCSRD義務が現れ、ずれ込み、場合によっては消えていくのを見てきました。その一方で、国内のSSBJ対応は、時価総額の大きいプライム上場企業について2027年3月期へ向けて着実に進んでいます。ブリュッセルがその年に何を決めたかにかかわらず、ひとつのデータ基盤で両方に応える必要がありました。

最初の一歩

オムニバス後の現行基準に照らして自社グループがどちら側にいるのか判然としない場合、あるいは適用基準が再び動いたときに何を出せないのかを把握したい場合、最初にやるべきはプロジェクト計画ではなく診断です。

そのために無料のCSRD準備度チェックを用意しました。数分で終わり、データの提出は不要で、いまの時点で満たせている部分と満たせていない部分がわかります。