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日本のサステナビリティ報告を支えるAI企業たち

Socious Team
日本のサステナビリティ報告を支えるAI企業たち

「AI企業」で検索しても、出てくるのは求人サイトや一般的なスタートアップ一覧ばかりだ。実際に日本のサステナビリティ報告サイクルにAIを提供している企業は見つからない。実名のクライアントと日付入りのプレスリリースを持つ企業は、なかなか出てこない。この市場を動かしている義務化は現実であり、間近に迫っている。金融庁は、時価総額3兆円超のプライム市場企業を対象に、2027年3月期からSSBJの義務的開示を求めている。1兆円超の企業は2028年、5000億円超の企業は2029年から続く(金融庁「サステナビリティ開示・保証に関する日本のロードマップ」2026年4月)。ここにEUのCSRDが重なる。2026年3月のオムニバス改正後は従業員1,000人超・売上高4億5000万ユーロ超の企業に絞られたが、それでもEU系グループの日本子会社の多くが対象に残る。東京の財務・サステナビリティ担当者の多くが、締切を前にツールを探している。

検索が生まれる背景にはコストの問題もある。CSRDの対象となる企業の多くは、1,000項目を超えるESRSデータポイントが適用対象になった時点で、年間10万ユーロを超える報告コストを見込んでいる。そのうち83%が、ボトルネックは執筆ではなくデータ収集にあると答えている(NovataWorkiva調査、n>2,200)。日本のSSBJ対応も根っこは同じ問題だ。散らばった業務データを、報告フレームワークが使える形にまとめる作業になる。以下の3社は、それぞれこの仕事の一部分を狙っている。

ここでは、実際にこの瞬間を狙って製品を売っている企業を紹介する。

富士通のベンチマークツール

2026年5月、富士通はデロイトトーマツと共同開発した「サステナビリティ開示ナビゲーター」というAIサービスを開始した。非財務開示を分析し、1,000社超の日本上場企業と比較ベンチマークするものだ(富士通グローバル プレスリリース)。富士通はここではベンダーだ。クライアントの開示を市場と比較する立場にある。リリースには、富士通が自社の開示のためにこのツールを使っているとは書かれていない。富士通のロードマップはAIによる開示文書の作成支援へと広がる方針だが、2026年5月時点の製品はベンチマークツールだ。デロイトトーマツとの協業は見逃せない点だ。ソフトウェアは富士通が提供する。1,000社超との比較でどの開示が水準を満たしているかを判断する部分は、デロイトトーマツの助言が担う。この分業が、今回取り上げた3社の中では、正式な保証業務にいちばん近い検証的な要素になっている。

aiESG。実名クライアントを持つ企業

aiESG株式会社は、統合報告書やESG開示を評価する生成AIサービス「aiESG for IR」を運営している。同社が2024年2月に出したプレスリリースには、実在する具体的な導入企業の名前がある。「本サービスは、既に九州電力株式会社にご採用いただいております」(aiESG / PR TIMES)。これはaiESG側がクライアントについて述べたものだ。九州電力自身がこう語った記録は、私たちの調べた限りでは見つからなかった。それでも日付とソースが明確で実名の事例であり、「AIとESG」報道の中では珍しい部類に入る。2026年2月までに、aiESGは独自LLMと104言語対応を備えた形にアップデートし、評価から制作までを一貫して行うワークフローへと拡張した(aiESG)。

HEROZ×NZAMのスコアリングエージェント

将棋AIで知られるHEROZは、企業向けAI事業に軸足を移した後、農林中金全共連アセットマネジメント(NZAM)と提携した。上場企業のESG開示を57項目にわたって自動評価するマルチモーダルLLMエージェントを構築し、2025年6月に業務適用が始まった(HEROZ プレスリリース)。これは市場の投資家側に立つ動きだ。NZAMは発行体が公表した情報を採点しているのであって、発行体の開示作成を助けているわけではない。開示する側に売り込む富士通やaiESGとは分けて考えたい。

これは真空の中で起きている話ではない。WorkivaやPersefoniといったグローバルなプラットフォームも日本市場に売り込んでおり、それらの比較は別記事でまとめてある。富士通・aiESG・HEROZ×NZAMが違うのは、日本語での開示やSSBJ・TCFDからISSBへの移行を、後付けのローカライズではなく最初の前提として作られている点だ。機能比較とは別に、それ自体に価値がある。

契約前に確かめておくべきこと

財務やサステナビリティの担当者がこの3社、あるいは他で比較したグローバルなプラットフォームを検討するときに知りたいのは、AIがパイプラインのどこに入っていて、その後に何が起きるかだ。富士通を使えば、自社の開示が市場の中でどの位置にあるかが数字で出てくる。aiESGはレポート本文そのものの完成度を上げる。HEROZ×NZAMは違う。あれは投資家側のツールで、発行体は自分の開示が採点された結果を後から知るだけだ。そのどれも、SSBJの第三者保証が始まる2028年3月期に監査人がサインできる数字は出さない。この保証義務は、いまFY2027の開示を準備している企業にそのまま重なる。ベンダーには、AIの出力の場所だけでなく、監査証跡の場所を直接聞いた方がいい。上に挙げた製品の多くでは、その二つは別のファイルにある。

3社に共通する構図

3社を並べると、ひとつの形が見えてくる。いずれも、第三者保証を組み込んだフルエンドツーエンドの報告書作成は行っていない。それぞれ市場比較、レポート作成支援、投資家評価という別々の工程を担当しているだけだ。3社とも過去1年半のうちに立ち上げ、あるいはアップデートされ、実名のクライアントと日付入りのリリースを持つ。それでも、それぞれが「AIがSSBJ報告書を書き、監査人がサインできる」という問題の、狭い一部分だけを解決している。

この文脈を踏まえると、PwCが2025年に世界約40カ国・約500人の経営層を対象に行った調査の数字も、素直に読める。サステナビリティ報告にAIを使う企業は前年の11%から28%に増えた(PwC、ESG Today経由)。これはグローバルの数字であって、日本固有ではない。「AIが提出書類を作っている」というより、「AIがワークフローのどこかに入っている」と読むべきだ。この動きを支える市場規模は、世界全体で2025年時点の約13億ドルから2034年には約74億ドルへと成長する見通しで、アジア太平洋地域が約26%、日本単独では約6%と推計されている(Fortune Business Insights)。

ギャップは実際どこにあるか

上に挙げたツールはいずれも、作成支援、ベンチマーク、採点のいずれかを行っている。公開情報を見る限り、報告書を出す前に、基礎となる数字が正しいことを独立した第三者として検証する機能を持つものはない。これは数字について良い文章を書くこととは別の機能だ。金融庁自身のロードマップも、大規模発行体についてはいずれこの機能が必要になると示している(金融庁ロードマップ)。Socious Reportが狙っているのは、まさにこの空白だ。ひとつのデータセットからAIがCSRD・SSBJ・ISSB準拠の報告書を作成し、Socious Verifyが独立した認証を付与する。同じシステムが自分の宿題を自分で採点する構図にはしない。

あなたも知っている会社がすでにSocious Reportを使っている、とは言わない。競合他社が私たちについて根拠のない主張をするのと同じことは、私たちもしたくない。提供できるのは、無料のCSRD・SSBJレディネスチェックだ。締切に追われてベンダーを探す前に、2027年度・2028年度の期限に対して自社のデータがどの位置にあるかを確認できる。

1兆円クラスの日本企業がSSBJ対応を迫られる2028年度が来る頃には、このリストに載る企業は減るのではなく増えているはずだ。上の3社は、今日の時点で公に確認できる実績を持つ企業にすぎない。来四半期、自社の財務チームがどのベンダーと話していても、ここで立てた問いと同じものを聞いてみてほしい。AIはパイプラインのどの部分に触れていて、そのあとを誰が確認しているのか。