ISSBの自然関連開示は「S3」ではなく実務記述書として出される
ISSBは2026年7月21日の会議で、自然関連開示の公開草案を投票にかけることを承認しました。12名の理事全員が賛成し、反対意向を示した理事はいません。コメント期間は120日と決まりました(IFRS財団 ワークプラン)。
理事会が作成しているのは**IFRS実務記述書(Practice Statement)**であり、IFRS S3ではありません。ワークプランの記載では、この要求事項はIFRS S1およびS2を「補足する」ものとされ、S1・S2そのものは改訂されません。
公表時期は、2026年10月にエレバンで開かれる生物多様性条約第17回締約国会議に合わせることが目標です(IPE)。内容はTNFDの枠組みを土台にしています。TNFDの採択機関は730を超え、運用資産はおよそ22兆ドルに達しました(TNFD)。
日本とEUで結果が分かれる
IFRS S1・S2を採用した法域が、実務記述書まで自動的に取り込むわけではありません。別の文書として、採用するかどうかを改めて判断します。
日本の場合はこうなります。SSBJ基準は2025年3月に確定し、IFRS S1・S2と実質的に同等とされています。金融庁のロードマップでは、プライム市場の時価総額3兆円以上の企業に2027年3月期から適用が義務化され、1兆円以上が2028年、5000億円以上が2029年と続きます。実務記述書はS1・S2の外側にあるため、この流れに自然関連の要求は乗ってきません。
EUでは、生物多様性はすでにESRS E4を通じてCSRDの報告義務になっています。2026年3月のオムニバス改正後の対象は従業員1,000人超かつ売上高4億5,000万ユーロ超の企業で、2027年度から適用され、最初の報告書は2028年に出ます。
EUに関係会社を持つ日本企業グループでは、同じ事業について、同じ年度に、欧州では自然関連の開示義務があり、日本にはないという状態が生じます。
10月までにやること
日本ではまだ法的な義務にはなりません。前倒しになるのは、データ収集を始める時期です。
拠点ごとの水ストレスや土地利用のデータは、揃えるのに数か月かかります。提出直前の数週間で財務チームが集められるものではありません。自国の規制当局が実務記述書を採用してから動く企業は、要求が確定した後に収集を始めることになります。
日本はこの分野では先行しています。TNFDに沿った自然関連の評価を実施している日本企業・金融機関は約130社で、国別では最も多い水準です(Eco-Business)。この評価の中身が、実務記述書に基づく開示の材料になります。まだ着手していない企業は、日程表から受ける印象よりも距離があります。
最初に確認したいのは、グループ内にCSRDのESRS E4の対象になる会社があるかどうかです。一社でもあれば、10月にISSBが何を公表するかにかかわらず、2028年には自然関連の開示を作ることになります。次に、TNFDの評価に必要な立地データが自社拠点と上流サプライヤーについて実在するかどうかです。これは報告すると決めるかどうかとは別の問題です。120日のコメント期間は、実際に評価をやってみて機能しなかった部分を伝える窓口として使えます。
自然関連の開示は、日本で2028年度から保証の対象になる気候関連の開示と並べて読まれます。元のファイルまでたどれない数値は、どちらのデータセットでも問題になります。Socious Reportは、一つのデータセットからCSRD・SSBJ・ISSBの報告書をAIで作成し、独立したSocious Verify認証を付けます。TNFDのために自然関連データをすでに集めている企業が、後から別のシステムを立ち上げ直さずに済みます。
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