SSBJの第三者保証、2028年3月期の義務化が実質2027年から始まる理由
金融庁は今回、SSBJ開示に対する第三者保証の義務化について、時価総額区分ごとに具体的な年度を示した。開示と保証の間の1年は、一見すると猶予期間に見える。実際は違う。しかも、想定されている範囲とも違う。
公表された3区分
金融庁が2026年4月にまとめたロードマップは、平均時価総額別に3つの区分を設定した。それぞれに開示義務化の開始年度と、その1年後に始まる保証義務化の開始年度がある(出典:FSAロードマップに関するLinklatersの分析、一次資料:金融庁「サステナビリティ開示・保証に関する日本のロードマップ」2026年4月)。
| 区分 | 時価総額 | 開示義務化 | 保証義務化 |
|---|---|---|---|
| 1 | 3兆円以上 | 2027年3月期〜 | 2028年3月期〜 |
| 2 | 1兆円〜3兆円 | 2028年3月期〜 | 2029年3月期〜 |
| 3 | 5,000億円〜1兆円 | 2029年3月期〜 | 2030年3月期〜 |
これらの区分が最終的に対象とするのは、東証プライム市場のおよそ1,500〜1,600社である。まず見るべきは区分1だ。ここでのパターンを、それ以下の区分がそのまま引き継ぐ。
初年度の「保証」が実際に確認する範囲
開示と保証の間の1年は、ある誤解を招きやすい。独立した第三者が数字を確認するまで、まる1年あるという読み方だ。だがロードマップが述べているのは、それとは少し違う。金融庁の2026年4月報告書に関するLinklatersの分析によれば、義務化から最初の2年間の限定的保証がカバーするのは、ガバナンス、リスク管理、Scope 1・2の温室効果ガス排出量に限られる。開示書類全体ではない。戦略に関する記述、Scope 1・2を超える指標と目標、Scope 3は、当初の保証範囲の外にある。範囲拡大は今後の検討課題とされているが、日程はまだ示されていない。
ここに、多くのコンプライアンス・タイムラインが見落としている実務上の帰結がある。区分1の企業は、2028年3月期の保証義務を完全に満たすことができる。それでいて、Scope 3の推計も、気候シナリオ分析も、移行計画も、社外の誰にも確認されないままということが起こり得る。開示書類の中でもっとも「もっともらしいが誤っている」数字が紛れ込みやすい部分は、当面のあいだ、社外チェックが義務ではない部分でもある。
保証が依拠する基準
金融庁は、IAASB(国際監査・保証基準審議会)の国際サステナビリティ保証基準5000号(ISSA 5000)に沿って国内の保証枠組みと実施ルールを構築する意向を示している。ISSA 5000は、サステナビリティ保証のために策定された初の包括的な国際基準で、限定的保証・合理的保証の双方に適用される。IAASBは2024年9月にこれを承認した。公益監視委員会(PIOB)の認証を経て、同年11月に正式公表された。発効は2026年12月15日で、早期適用も推奨されている(IAASB)。
この日付を先ほどの区分と重ねてみる。ISSA 5000の発効は、区分1の開示義務化開始のわずか3か月半前だ。保証義務化開始からは、ちょうど15か月前にあたる。2028年3月期に日本の保証提供者が適用する基準そのものが、本格運用が始まる時点でまだできたばかりということになる。それを適用できる人材が不足している市場に、その基準がそのまま入ってくる。
期限より先に来るキャパシティ制約
金融庁自身のモニタリング資料も、業界が量的な負荷増に備えつつある様子を描いている。日本のビッグ4系列は2027年4月の義務化に向けてすでに採用を進めている。各社のサステナビリティ専門家は、初期段階でビッグ4の監査業務量が15〜20%増加すると見込んでいる。同じ報道は、その背景にある制約も名指ししている。「有資格CPAの人材プールが限られている」というものだ(Bloomberg Tax)。
区分1の企業すべての2028年3月期保証業務が、他のすべての区分1企業と同じ18か月の窓に集中する。全社が、市場自体がまだ十分ではないと言っている有資格プロバイダーの限られた枠を取り合うことになる。義務化が始まる2028年3月期になって初めて保証提供者と話し始める企業は、需要のピークでスタートラインに立つ。区分1にとってまだ開示が任意である2026年のうちに動き出す企業は、順番待ちの列ができる前に交渉できる。
「無料」に見える1年が、実は準備の年である理由
2027年3月期は、保証が無視できるリハーサルの年ではない。2028年3月期の保証業務が検証することになる、ガバナンス記録・リスク管理文書・Scope 1・2排出量データを生み出す年だ。2028年3月期の開示を検証する監査人は、2028年3月期からではなく、各数値がどこから来たのかを問うところから始める。その答えは、多くの場合それより前、2027年3月期、あるいはさらに以前に稼働していたシステムと統制まで遡る。保証への準備度は、保証そのものが義務化された時点で付け足せる性質のものではない。開示年度のインフラそのものが持つ性質だ。
保証範囲が限定されていることが、この点をさらに際立たせる。最初に確認されるのがガバナンス、リスク管理、Scope 1・2である以上、そこにこそ最初に監査証跡が要る。誰が入力し、どの出典から来て、いつ、誰の承認を経たか、跡付けられる形の証跡だ。「開示だけが今年の課題で、保証は来年考える」という姿勢でこの1年を過ごした企業は、その証跡を欠いたままガバナンスとScope 1・2のデータを積み上げてしまう。そして、監査法人自身が「キャパシティが逼迫している」と語るまさにその期間に、その手戻り作業を抱え込むことになる。
保証が義務化される前に整えておくべきこと
保証の時計が動き出す前に整えておく価値があるものが、3つある。ガバナンス、リスク管理、Scope 1・2の各開示に入力されるすべてのデータについて、誰が・いつ・どの出典から入力したかの記録が要る。入力の時点で捕捉しておく。後からメールやスプレッドシートを掘り起こして再構成するのではない。排出係数、その出典、算定方法の変更履歴についても、経理担当者が記憶を頼りに数式を説明しなくて済む記録が要る。そして、2026年か2027年のうちに保証提供者と行う予備的なレビューは、たとえ非公式なものでも、区分全体が一斉に保証を義務づけられてから枠を取り合うより、提供者の稼働時間という点でコストが低くて済む。
これらはいずれも、保証範囲がScope 3や戦略記述を含む開示書類全体へと拡大するのを待つ必要はない。Scope 3、戦略の記述、その他の開示部分も、いずれロードマップがまだ日程を示していないのと同じ精査を受けることになる。範囲が限定された初期段階で来歴を記録する習慣を身につけておくのが、もっともコストの低い学び方だ。
Socious Report が担う部分
Socious Report は、出所・日付・承認の経路を、数値が作られたその時点で各項目に紐づけて記録する。対象は、SSBJの初回保証がまず確認するガバナンス、リスク管理、排出量の各開示だ。事後の再構成ではなく、保証提供者が直接レビューできる形で記録を構造化しておく。
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